ボツリヌス菌から生まれたボトックス
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ボトックスというと、美容で良く聞くしわ取り注射をイメージする方も多いと思います。
そもそもボトックスというのは何なのでしょうか。
また、ボツリヌス菌との関係はどうなのでしょうか。
東京都福祉保健局によると
「ボツリヌス菌は土壌や海、湖、川などの泥砂中に分布している嫌気性菌で、熱に強い芽胞を形成します。ボツリヌス菌の芽胞は、低酸素状態に置かれると発芽・増殖が起こり、毒素が産生されます。この毒素は、現在知られている自然界の毒素の中では最強の毒力があるといわれ、A~Gまでの型に分類されています。」
ボツリヌス食中毒は吐き気、おう吐や視力障害、言語障害、えん下困難 (物を飲み込みづらくなる。)などの神経症状が現れるのが特徴で、重症例では呼吸麻痺により死亡することもあるとのこと。
これらの情報からわかることは、「ボツリヌス菌は毒である!」ということです。
そんなイメージの悪いボツリヌスですが、ボツリヌス菌が作り出すA型ボツリヌスから抽出したものです。医療用薬品メーカーのアラガン社が製品化したのが「ボトックス」。ですから、ボトックスはひとつの商品名なのです。
この毒素から取りだしたものをごく少量、ケイレンしている筋肉に注射すると、その筋肉は弛緩してケイレンが治まることがわかっています。
これを応用し、医薬品として利用しているのが、ボトックスなのです。ですから、顔面ケイレンの治療や、美容外科ではしわの治療薬として使われるようになりました。基本的に表情じわにはボトックス、深いしわにはヒアルロン酸注射が使われています。
歯医者でもボトックス?
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ボトックスはしわ取りばかりではありません。実は歯ぎしりや食いしばりにも効果があることが知られています。
寝てしまうと自分ではいびきや歯ぎしり・食いしばりは、気づかないこともあります。ところが、歯ぎしり・食いしばりは、歯に悪影響を与えます。
寝ているうちにギリギリとしているので、気づかないうちに歯にものすごい力がかかり、歯が欠けたり、ヒビが入ったりしてしまうこともあります。
また、あごにも力が入るため、痛みを感じたり、口が開かなくなる「顎関節症(がくかんせつしょう)」の心配もあります。その上、頬や舌を傷つけますし、くり返し刺激を与えていると、組織を角化させ、中にはそれがガン化することもあるのです。
このように放置するとまずいのが歯ぎしりや食いしばりなのです。
それを予防するためにナイトガードというマウスピースを作り、歯をガードする方法があります。しかし、毎日忘れずに付けるということはとっても難しいもの。なかなか習慣づけができなかったり、お酒を飲めば忘れるし、面倒になちがちです。
そんな人のために歯のダメージを少しでも防げてくれるのが、ボトックスなのです。ですから、歯医者では美容目的ではなく、治療法のひとつとして用いられているのです。
歯医者でのボトックス治療
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ボトックス治療はどんな症状に効果があるのでしょうか。
・顎関節症を緩和してくれます
口を大きく開けると痛む、口を動かすだけでカクッというへんな音がする、あごが外れるような感覚があるのが顎関節症です。重症になると口が開けられなくなる人も。その上、それだけに留まらず、強い頭痛やめまいを引き起こしたりすることもあります。
・歯ぎしりや食いしばりを緩和してくれます
歯ぎしりや食いしばりは知らないうちに起こっています。ですから、せっかく治療した歯が割れたり、ヒビが入ったり、すり減ったりします。家族に歯ぎしりを指摘されたら、なるべく早めに歯科医に相談するようにしましょう。
・歯茎が見える「ガミースマイル」を緩和してくれます
口を開けたときに歯茎までが見えてしまうことを「ガミースマイル」といいます。それはそれでチャーミングにも思えますが、原因はいろいろとありますが、上唇が上がり過ぎることも一因です。
咬筋(こうきん)にボトックスを注射することで簡単に緩和することができるようになります。咬筋はその名の通り、噛む筋肉。ものを食べる時に使う筋肉です。そこにボトックスを注入します。
美容と同じように効果は3~6カ月続くとされ、それ以降はまた注入することが理想的ですが、ただ、歯ぎしりなどは数回で治ることもあります。また、美容と同じで何度も行うと効果が薄れてくることもあります。
ボトックスは自由診療のため、歯科医院によっては値段も違ってきます。あとあとトラブルにならないためにも、しっかりと検討することが重要です。
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