虫歯と歯周病の違い メカニズムと予防の考え方の違いを歯科医が解説

虫歯と歯周病の違い メカニズムと予防の考え方の違いを歯科医が解説

虫歯と歯周病の違いをわかりやすく解説します。違いを知るとそれぞれの予防方法が違うことを理解することができます。歯磨きをしても歯周病が改善しない方におすすめの記事です。 2021年08月19日作成

  • カテゴリお口の悩み - 虫歯
  • VIEW:307

虫歯と歯周病の違いをわかりやすく解説します。違いを知るとそれぞれの予防方法が違うことを理解することができます。歯磨きをしても歯周病が改善しない方におすすめの記事です。 2021年08月19日作成

監修:歯学博士・村津大地
医療法人むらつ歯科クリニック理事長。九州大学歯学部大学院卒業、福岡歯科大学医科歯科総合病院口腔外科助教任務。

虫歯になりにくいので歯をケアしなくても大丈夫?

虫歯になりにくくても、歯周病になることは十分に考えられます。
虫歯のリスクが低くてもしっかりと歯のケアをしましょう。

最近は虫歯予防の考え方が浸透しており、全体としての虫歯になる方は減少傾向にあります。口内環境がよく、虫歯になりにくい方が増えているからです。ただ、虫歯になりにくいからといって、歯のケアをしなくていいかといえば、そういうわけではありません。

歯周病があるからです。

歯周病は身体のさまざまな病気に関連するやっかいな病気ということは「歯周病に関連する疾病」の記事でも説明しました。そして歯周病は、歯のケアをしなければ確実にかかってしまう病気なので、しっかりと歯のケアをしましょう。

なぜ虫歯にならないのに歯周病になるのか?

虫歯と歯周病とでは、原因もメカニズムもまったく違うからです。

虫歯と歯周病はまったく別の病気です。2つの病気の違いを理解してそれぞれに効果的な予防をすることが好ましいです。

虫歯の原因とメカニズム

虫歯は、口の中の菌が原因で起こります。原因となる菌は複数ありますが、その中でもミュータンス菌(正式名称:ストレプトコッカス ミュータンス)が代表的です。

ミュータンス菌は、”空気の好き”な菌です=好気性菌です。歯の表面についた歯垢(プラーク)に棲みつき、”空気”と食べカスなどに含まれる”糖”を栄養にして酸を出す特性があります。

ミュータンス菌がだした酸によって歯が溶けてしまうのが虫歯という病気なのです。

歯周病の原因とメカニズム

歯周病も、口の中の菌が原因で起こります。ただ、原因菌の性質がまったく違います。

歯周病の原因菌は”空気が嫌い”な菌=嫌気性菌です。歯周病菌は空気の少ない場所で好んで繁殖していく性質があるということです。
つまり、歯と歯茎のすき間や溝(歯周ポケット)に歯垢(プラーク)がたまると、空気を遮断して、その中で歯周病菌が繁殖し増えていくという仕組みです。

歯周病菌が増えると、歯周病菌が出す毒素によって歯茎が炎症などの反応が起こるなど、歯周病の諸症状が起こることになります。



つまり、虫歯と歯周病とでは原因となる菌も違いますし、症状が出るまでのメカニズムも違うので虫歯のためだけのケアをしていては歯周病を予防することはできないのです。

虫歯予防と歯周病予防のケアの違いは?

時間をかけて歯磨きをして歯の汚れをとるという意味では違いはありません。ただ、虫歯は”空気がある”歯の表面、歯周病は歯茎など”空気がない”場所で起こります。それぞれの特性を押さえて歯磨きをしましょう。


虫歯と歯周病の予防の基本的な考え方は、両方とも「歯をしっかりと磨く」「定期的に歯医者にいく」ということにつきます。

ただし、虫歯も歯周病も原因もメカニズムも違うので、それぞれの特性に合わせてケアをしなければ意味がありません。例えば、こまめに歯を磨いているのに歯周病になってしまうということはあり得るということです。

日常的に正しい知識をもとに正しいケアを行うことが大切です。

虫歯のためのケア

虫歯の原因菌は生まれたときから持っているわけではありません。主に感染によって口の中に住み着きます。生後10ヶ月~36ヶ月くらいの間に、保護者(主に母親)から感染することが多いと言われています。

まずは、いかに幼少期に虫歯の原因菌に感染しないかということが虫歯予防には大事な考え方です。

虫歯の原因菌を多く保有している場合でも、歯磨きをしっかりすることで虫歯の原因菌の栄養となる”糖”を除去することで予防効果が見込めます。

歯周病のためのケア

歯磨きは主に歯周病予防のために行うといえば大袈裟かもしれませんが、それほど歯周病に対して歯磨きは有効なケアの手段です。

殺菌作用のあるマウスウォッシュや歯磨き粉などを使用することが、歯周病予防であると考えている方が多いかもしれませんが、必ずしも薬用殺菌が歯周病予防に繋がらないということを知っておきましょう。

なぜならば、いくら口内を殺菌したとしても、肝心の歯周ポケットが歯垢などで蓋をされていれば、殺菌剤は菌には届かないからです。しっかりと歯磨きによって歯垢を除去して、歯周ポケットの奥まで空気が届く環境を作るには薬用での殺菌の前に徹底した歯磨きが必要だということです。

しっかり歯磨きをして、「歯垢の蓋がとれた状態」=「歯周病菌が嫌いな”空気”がすみずみまで届く状態」を作ることが、歯周病ケアの基本的な考え方です。しっかりと時間をかけて歯磨きを行えば、虫歯の予防にも繋がります。

やみくもに磨くのではなく、しっかりと意味のある歯磨きを行うことを心がけていただければと思います。


しっかりとした歯磨きの習慣を作ることと、かかりつけの歯医者を見つけて3ヶ月を目安に定期的に診てもらうことをおすすめしています。

まとめ:虫歯と歯周病の違い

■虫歯とは、虫歯の原因菌が”糖”を食べて排出する酸によって歯がとける病気
■歯周病とは、歯と歯茎の間で細菌による感染が起こり、細菌の出す毒素によって様々な症状が引き起こされる病気
■虫歯の原因菌は”空気が好き”
■歯周病の原因菌は”空気が嫌い”
■虫歯はいかに幼少期に菌に感染しないか。歯磨きは主に歯周病予防のために。歯周病のためにしっかりと歯磨きをすれば虫歯予防にも繋がる。
■歯周病菌が繁殖しにくい歯周ポケットの奥まで空気が届く口内環境を作ることが基本的な考え方。
■時間をかけて歯磨きをする習慣と歯医者に定期的にいくことが大切

虫歯と歯周病の違いを知ることで、歯のトラブルにも適切に対処するヒントにしていただければ幸いです。

また、かかりつけの歯医者を見つけて、手軽に定期的に診てもらえる環境をつくり、少しでも違和感があれば歯科での受診をおすすめします。

  • カテゴリお口の悩み - 虫歯
  • VIEW:307