歯周病予防 歯周病の原因から予防の考え方を歯科医が解説

歯周病予防 歯周病の原因から予防の考え方を歯科医が解説

歯周病の原因をわかりやすく解説しながら、正しい歯周病予防の考え方を説明します。 2021年08月19日作成

  • カテゴリ歯の治療・審美 - 歯茎治療

歯周病の原因をわかりやすく解説しながら、正しい歯周病予防の考え方を説明します。 2021年08月19日作成

話し手:歯学博士・村津大地
医療法人むらつ歯科クリニック理事長。九州大学歯学部大学院卒業、福岡歯科大学医科歯科総合病院口腔外科助教任務。

歯周病予防の基本的な考え方は?

歯周病とは歯と歯茎の間で細菌による感染が起こり、細菌の出す毒素によって様々な症状が引き起こされる病気。細菌をいかに増やさないかが大事。

歯周病の原因菌は”空気が嫌い”な菌=嫌気性菌。歯周病菌は空気の少ない場所で好んで繁殖していく性質があるということです。
つまり、歯と歯茎のすき間や溝(歯周ポケット)に歯垢(プラーク)がたまると、空気を遮断して、その中で歯周病菌などの細菌が繁殖し増えていくのです。

口の中は、細かいすき間や溝がたくさんあるので、食べカスなどで空気を遮断する環境が作られやすいです。歯周病の原因菌を増やさないためには、細かいすき間や溝に空気が届く環境=歯周病菌が嫌がる口内環境を維持することが大事です。

歯周病菌が嫌がる口内環境を維持するためには?

歯周病菌が嫌がる環境は、空気がしっかりと届く環境。
そのために、歯磨きで口の中のゴミをしっかりと取り切ること。


テレビのCMなどであるような殺菌作用のあるマウスウォッシュや歯磨き粉などを使えば、歯周病菌が嫌がる口内環境になるかといえばそうではありません。

口内で歯周病菌が増えない環境を作るためには、何よりも歯磨きが大事です。
なぜならば、いくら口内を殺菌したとしても、肝心の歯周ポケットが歯垢などで蓋をされていれば、殺菌剤は菌には届かないからです。

もちろんマウスウォッシュや歯磨き粉など商品が謳っている殺菌作用を否定するものではありません。
ただ、しっかりと歯垢を除去して、歯周ポケットの奥まで空気が届く環境を作るには薬用での殺菌の前に徹底した歯磨きが必要だということです。

歯磨きをして、「歯垢の蓋がとれた状態」=「歯周ポケットの奥まで薬剤が届く環境」ができて初めて殺菌の意味が出てくるのです。

歯周病予防に必要な歯磨き方法は?

マウスウォッシュや歯磨き粉はあくまで補助的な役割。
まずは水でしっかりと、とにかく時間をかけて磨くこと。


例え話になりますが、歯磨きは”部屋のホコリ取り掃除”と同じです。
食器洗いだと思っている方も多いかもしれませんが、洗剤を付ければ汚れが落ちるわけではないのが歯磨きなのです。
だから、歯磨きはどちらかというと部屋のホコリ掃除と似ているのです。洗剤を付ければいいわけではなく、時間をかけて根気強くやらないといけない作業なのです。

時間をかけて汚れを取ることによって空気が入りやすくなる。空気が入りやすくなったところに歯磨き粉の成分がやっと通るようになる、そこで初めて薬用の効果が出るのです。

まずは水だけでしっかりと汚れを落とす

だから、歯磨き粉はあくまで補助的な役割ということをお伝えしたいです。

歯磨き粉によって泡が立つとすぐに洗った気分は出ますが、歯磨きが「時間をかけて根気強くやらないといけない作業」ということを考えた場合には、その泡が返って邪魔をする場合もあります。

口の中で泡が広がると、すぐに吐き出したくなるのは当然だと思います。なので、長時間の歯磨きには向いていません。
「まずは時間をかけて汚れをしっかりと取り切る」と考えた場合には、何もつけずに水だけで歯を磨くことをおすすめしたいです。

水だけであれば、泡が口の中に広がることもないので長時間の歯磨きに向いているのです。その後で、気になるようであれば歯磨き粉やマウスウォッシュを補助的に使う。

”ながら”歯磨きで時間を稼ぐ

歯磨きは時間ほど効果が見込めることは、繰り返し言っている通りです。そのために”ながら”歯磨きもおすすめしています。

我々は歯磨きの時に洗面台の前に立たないでくださいと言っています。
鏡の前にうつっている自分だけを見ていると続けられないのです。自分の顔を見るのが嫌だとかそういうのではなくて、「あーあれやってないわ」などと別のことを考えて、30秒ほどでやめてしまうケースが多いのです。

だからお風呂に入りながらとか、テレビを見ながらとか、何か別のことをやりながらついでにやるのが一番良いと考えています。歯磨きをしようと考えるとかえって大変です。
毎日のケアはストレスをかけないでやるのが一番なのです。

歯磨きをする時間をつくるのではなく、何かの作業をしながら歯磨きをすることで結果的に時間をかけている、それが一番楽なのではないでしょうか。日常に落とし込んでやると苦にならないということです。

水だけの歯磨きでも口臭予防はできる

口臭が気になるから歯磨き粉を使う人も多いかもしれませんが、歯の汚れを取り切っていなければ、生ごみに消臭スプレーをかけているのと同じような状態です。

歯周病は感染からおこるものでもあるのでどうしても臭いがでることがあります。歯周病菌が臭いの原因である場合、先ほどから言っているように、歯磨き粉をつけるだけでは、口臭の原因が取り除かれたとは言えないということです。

例えば、生ごみの臭いをとる場合、いちばんの方法は「消臭スプレーをかけること」ではなく「生ごみ自体を捨てること」です。歯磨きの場合も同じです。原因をしっかりと取り除けば、臭いも気にならなくなります。そのために必ずしも歯磨き粉が必要という訳ではないということです。

労力をかけないと本当に臭いはとれないのです。原因を取り除くためには時間をかける必要があるのです。

まとめ:歯周病の原因から予防の考え方

■歯周病とは、歯と歯茎の間で細菌による感染が起こり、細菌の出す毒素によって様々な症状が引き起こされること
■歯周病金は空気が嫌いな菌である。
■歯周病菌が繁殖しにくい歯周ポケットの奥まで空気が届く口内環境を作ることが基本的な考え方。
■歯周ポケットの奥まで空気が届く環境を作るためには、時間をかけて歯磨きをすることが大切
■時間をかけて歯磨きをする習慣を作ることも大切


歯周病は歯を奪うだけでなく、血液を通して毒素が身体をめぐり、身体中の不調にもつながる病気と言われています。しかし、しっかりと時間をかけて歯を磨くことで予防をすることも可能な病気です。日常的に長時間歯を磨く習慣をつけていきましょう。

また、歯茎から血が出たり、違和感があるなど、早い段階で歯科での受診をおすすめします。

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