自由診療と保険診療の違い、メリット・デメリットを解説

自由診療と保険診療の違い、メリット・デメリットを解説

歯科や美容医療などでよく聞く自由診療(自費診療)と保険診療の違い、具体的なメリットとデメリットを歯科医監修のもと解説します。 2021年06月26日作成

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歯科や美容医療などでよく聞く自由診療(自費診療)と保険診療の違い、具体的なメリットとデメリットを歯科医監修のもと解説します。 2021年06月26日作成

監修:歯学博士・村津大地
医療法人むらつ歯科クリニック理事長。九州大学歯学部大学院卒業、福岡歯科大学医科歯科総合病院口腔外科助教任務。

「保険診療」「自由診療」とは?

公的医療保険が適用される診療を「保険診療」、適用されない診療を「自由診療」と言います。

病院など医療機関での診療には、保険診療と自由診療の2パターンがあります。

■保険診療:公的医療保険が適用される診療
➡健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度などの公的医療保険が適用され、患者が窓口で支払う医療費(自己負担額)が3割で済む。

■自由診療:公的医療保険が適用されない診療
➡健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度などの公的医療保険が適用されず、患者は医療費を全額負担する。

「保険診療」の特徴とメリット・デメリット

保険診療は全国で一般的に普及している診療です。

保険診療では公的医療保険が適用され、患者さんが病院や薬局の窓口で支払う金額(医療費)は3割になります(あとの7割が国が負担します)。

公的医療保険とは?

保険診療で医療費が安く済む理由となる「公的医療保険」。これは、基本的に日本の国民すべてが加入している保険です。

日本では「国民皆保険制度」といって、国民すべてが公的医療保険に加入することが法律で決められています。
これによって、国民すべてが平等な医療を比較的安価で受けられることが保証されているのです。

公的医療保険は大きく3種類あります。


■被用者保険
➡健康保険組合(組合健保)、全国健康保険協会(協会けんぽ)、共済組合(共済)など、会社に勤めている人とその家族が加入する保険

■国民健康保険(国保)
➡農家やフリーランス、非正規雇用者、自営業者、会社を退職した人などとその家族が加入する保険

■後期高齢者医療制度
➡75歳以上の人が加入する保険


日本の国民であれば、基本的にこの3つの保険のどれかに加入していることになります。

保険診療のメリット

■患者さんが支払う医療費が少ない(原則3割負担)

■どの医療機関でも同じ内容の治療を同じ値段で受けられる(平等性)


このように必要最低限の治療を誰でも安価で受けられるメリットがあります。

保険診療のデメリット

■治療の内容や順番、使用する材料などが細かく決められている(基本的に厚生労働省が認めたもの以外は使用できない)
➡患者さんひとりひとりに合わせて治療内容を柔軟に変えることができず、必ずしも最適最善な治療方法であるとは限らない

■患者数が多く、医師一人が患者一人にかける時間が短くなりがち
➡治療の質が常に良いとは限らない


このように、保険診療とは「全ての国民に必要最低限の医療を平等に届ける」ことが目的であるため、より良質で自分に適した治療を求めている患者さんにとっては必ずしも良いとは言えない場合もあります。

また、厚生労働省で承認されていない最新の薬や治療法を用いる場合も公的医療保険が適用されず、保険診療になりません。

たとえば、厚生労働省で承認されていない海外の抗がん剤を用いたがん治療や、二重まぶたにするための美容整形手術、歯並びの矯正治療などは保険診療ではなく、自由診療(下記にて解説)になります。

「自由診療」の特徴とメリット・デメリット

自由診療のメリット

■厚生労働省で定められていない治療法、順番、材料なども自由に使うことができる
➡保険診療では使えなかった最新技術や新しい素材などを用いて、より患者さんひとりひとりに適した治療法が提供される

■医師一人が患者一人にかける時間が長い
➡より質の高い丁寧な治療を受けられる


自由診療は、公的医療保険が適用されない診療です。保険が適用されないため、患者さんは医療費を全額自己負担することになりますが、保険のルールに縛られる必要がないため治療の幅が広がり、より自分に合った高度な治療が受けられるというメリットがあります。

自由診療のデメリット

■医療費が高額になりがち
➡保険が適用されず全額負担になるため、保険診療に比べて医療費が高くなることが多い

■医院によって料金が異なる
➡保険診療と違って料金は定められておらず、各医院で設定されている


このように主に経済面での患者さんの負担が大きくなることが自由診療のデメリットと言えます。

料金と治療内容をふまえて、納得のいく治療を受けられるようしっかり医師と相談しましょう。

自由診療と保険診療の治療の違い

実際に、自由診療と保険診療では治療内容にどのような違いが出るのでしょうか?

日本で承認されていない抗がん剤を用いたがん治療や、病気の治療目的ではない二重まぶたの手術などは、保険が適用されないため自由診療になります。

さらに、同じ病気に対しても自由診療と保険診療では治療内容に違いがあります。

たとえば、虫歯治療における違いを見てみましょう。

保険診療 自由診療
使える歯科材料
(削った歯に詰めたり被せたりするもの)
制限あり
・銀歯
・レジン 等

➡︎原価が安い分劣化しやすく見た目も目立つ
制限なし
・セラミック
・ジルコニア 等

➡︎原価が高い分丈夫で安全性が高い
使える治療法
(歯を失った場合の回復方法)
制限あり
・ブリッジ(両隣の歯を削って橋を架けるようにダミーの歯を固定する)

➡︎両隣の歯を削る必要があり、見た目も多少不自然
制限なし
・インプラント(チタン製のネジを顎の骨に埋めて人工歯をかぶせる)

➡両隣の歯を削らずに、欠損した歯を自然に回復

このように、保険診療と自由診療では使える材料や治療法に違いが出ます。

一般的に、保険診療は安価な代わりにある程度のデメリットがあります。
逆に、自由診療では高価な代わりに安全性や機能において長期的なメリットがあります。

もちろん、どちらかが優れているというわけではありません。ご自身にとってどちらが最適か、何を優先するかを考えて選んでくださいね。

「自由診療」にこだわるむらつ歯科クリニック

むらつ歯科クリニックでは、保険診療を一切行わず、すべて自由診療としています。

これまでご説明したように、保険診療と自由診療ではご提供できる治療内容に大きな違いがあります。

保険診療では保険で定められた内容、順番、材料でしか治療ができず、患者さんひとりひとりに向き合う時間も多くありません。たとえその患者さんにとってベストとは言えない治療法であっても、保険診療である限りはそれ以外の選択肢がありません。

当院では、「歯は臓器」の考え方のもと、歯は全身の健康の入り口としています。口の中の状態が、全身の健康にまで影響を及ぼしかねないという考え方です。

そのため、口の中に入れるものは徹底的にこだわるべきだと考えています。

したがって当院では、長期的にみて患者さんの健康に悪影響を及ぼす可能性のある治療法や材料はご提供しません。
保険のルール内に縛られず、患者さんひとりひとりに適した材料と治療法を用いて、丁寧に時間をかけて治療を行っています。

私たちが本当に良いと自信を持っておすすめできるものを患者さんにご提供する。それが一生モノの、本物の医療だと思っています。その思いから、当院ではすべて自由診療としています。

※保険診療と自由診療は混ぜて使えないの?

➡混ぜて使うことは、法律で禁止されています。

保険診療と自由診療を併用することを「混合診療」と言います。これは、保険が適用される範囲のみ保険診療(3割負担)にし、保険が適用されない範囲は自由診療(全額負担)にするやり方です。

これを認めてしまうと、「たくさんお金を払う人だけがより良い治療を受けられる」という考え方を国が認めてしまうことになります。

国としては「より良い治療をすべての国民が同じ料金で受けられること」を原則としているため、「追加でお金を払えばよい治療を受けられる」という混合診療は容易に認められないのです。

このように原則として混合診療が認められないため、保険の範囲内の診療と範囲を超えた診療が同時に行われた場合、一連の治療はすべて全額自己負担(自由診療)と決められています。

※混合診療は、差額ベッド(入院した時の個室代)や新しい高度な医療技術などのごく一部のみで認められています。 

保険診療と自由診療にはそれぞれメリットとデメリットがあり、どちらか一方が優れているわけではありません。

ご自身の価値観に合うほうを選んで、納得のいく医療を受けることが大切です。

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