歯周病とは? 原因とメカニズム、進行過程を歯科医が解説

歯周病とは? 原因とメカニズム、進行過程を歯科医が解説

歯周病とはどういう状態を言うのでしょうか? 歯周病になる原因と仕組み、進行過程を歯科医が解説します。 2021年06月26日作成

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歯周病とはどういう状態を言うのでしょうか? 歯周病になる原因と仕組み、進行過程を歯科医が解説します。 2021年06月26日作成

監修:歯学博士・村津大地
医療法人むらつ歯科クリニック理事長。九州大学歯学部大学院卒業、福岡歯科大学医科歯科総合病院口腔外科助教任務。

歯周病とはどんな状態?

歯周病とは、歯と歯茎の間で細菌による感染が起こり、歯の周りで炎症が起こっている状態を指します。

歯と歯茎のすき間や溝(歯周ポケット)に歯垢(プラーク)がたまると、その中で歯周病菌などの細菌が繁殖し増えていきます。すると、増えすぎた歯周病菌に対して体が防御反応(免疫反応)を起こします。これが炎症です。

この炎症が歯の周りで進行することで、歯茎が腫れてぶよぶよした感じになったり、血が出やすくなったりとさまざまな症状が出ます。

歯周病はどう進行する?

歯周病は、歯肉炎・歯周炎(歯槽膿漏)の総称です。初期症状である歯肉炎から、重症の歯周炎・歯槽膿漏へと進行します。

軽度(歯肉炎)から、中度(歯周炎)、重度(歯槽膿漏)までの過程を見ていきましょう。

軽度にあたる「歯肉炎」

歯周病の初期症状である歯肉炎を理解するには、一般的な「炎症」で起こる5つの症状を知ることが大切です。

【炎症の一般的な症状】
①発赤(ほっせき)
毛細血管が広がって血流が増加することで赤くなります。

②熱感(ねっかん)
血流が増加することで熱く感じます。

③腫脹(しゅちょう)
広がった血管から血液成分が滲みだし、腫れます。

④疼痛(とうつう)
腫れたことで組織が圧迫され、痛みを感じます。

⑤機能障害
腫れや痛みなどが合わさり、炎症を起こした部位が動かせなくなるなど困難が生じます。

この5つの症状は、歯周病に限らずニキビや火傷などさまざまな炎症で一般的に起こるものです。

歯周病もまた歯の周りで炎症が起こる病気なので、この5つの症状がまず初めにあらわれます。すなわち、歯茎が赤く腫れる、血が出やすくなるなどが、歯周病の初期症状である歯肉炎(歯茎の炎症)の症状です。

中度~重度にあたる「歯周炎」と「歯槽膿漏」

歯肉炎を放置していると、歯茎が腫れて広くなった歯周ポケットにさらに歯周病菌が入り込み、増えていくという悪循環が起こります。そうして炎症の範囲が広がり、歯を支える根元の部分まで炎症が広がった状態を歯周炎と言います。

また、歯周病菌はエンドトキシンという毒素を出します。この毒素は、私たちの体にいる「破骨細胞(骨を溶かす働きがある細胞)」を引き寄せる性質を持っています。

そのため、歯肉炎や歯周炎を放置していると集まってきた破骨細胞が歯を支えている骨を溶かしてしまい、歯茎が下がったり歯がぐらぐらして抜けやすくなったりします。この状態を歯槽膿漏と言います。

※破骨細胞は、悪い細胞ではありません
私たちの体では、常に古い骨が壊され、新しい骨が誕生する「骨代謝」が行われています。これを担うのが、骨を溶かす破骨細胞と、骨を作る骨芽細胞です。
破骨細胞と骨芽細胞が一定のバランスを保って骨の破壊と再生を繰り返すことで、ひとの体内の骨は3年~5年かけて新しい骨に生まれ変わっています。破骨細胞と骨芽細胞は人が生きるためにとても重要な細胞なのです。


一般的に「歯周病」とひとくくりに呼ばれていますが、実は「歯の周りで炎症が起こる」と「骨が溶ける」という2つの症状が混じっています。
単に歯茎が腫れるだけではなく、最終的にあごの骨が溶けてしまい歯を失う可能性もある恐ろしい病気なのです。

歯周病菌はどこからくるの?

歯周病の原因の1つである歯周病菌は、ほとんどの人の口の中にもともと存在することが多いです。

歯周病の原因の1つである歯周病菌は、人間の「常在菌」の1つです。
常在菌の中でも特に口の中にいるものを「口腔内常在菌」と言いますが、その数は約700種類、約100億個といわれています。

もともと人間は細菌と共生状態にあります。ヨーグルトのCMなどでよく聞く大腸菌、乳酸菌、ビフィズス菌などが良い例ですね。口の中も同様に、さまざまな細菌によって健康に保たれています。

しかし、口の中にいる細菌にも良いもの(善玉菌)と悪いもの(悪玉菌)があります。
歯周病菌(ジンジバリス菌)は悪玉菌の1つです。さまざまな条件が重なり悪玉菌が増えて善玉菌とのバランスが崩れると、歯周病などの病気につながります。

歯周病菌は空気が嫌い

一般的に、菌には大きく2種類あります。「好気性菌」と「嫌気性菌」です。

■好気性菌:空気が好きな菌。生きるために酸素が必要な菌のこと。
■嫌気性菌:空気が嫌いな菌。生きるために酸素を必要としない菌のこと。

なかでも歯周病菌は、嫌気性菌(空気が嫌いな菌)にあたります。
だから歯周病菌は空気の届かない歯と歯の間やその奥にいることが多いのです。

歯周ポケットに蓋をしてしまうから、歯周病菌が増える

嫌気性菌である歯周病菌は、通常は歯と歯の間やその奥の小さなすき間にしかいられず、増えることはできません。では、なぜ歯周病になってしまうのでしょう?

それは、歯を磨かずに歯垢(プラーク)が歯周ポケットに溜まることで「蓋」をしてしまい、歯周ポケットの中の空気がなくなってしまうからです。空気がなくなると、嫌気性菌である歯周病菌は活性化し、繁殖してしまいます。

これが歯周病の始まりです。だから「歯を磨かないと歯周病になる」と言われているんですね。

歯周病にならないためにはしっかり時間をかけて歯を磨き、歯垢を溜めないことが一番です。
ご自身でしっかり磨くことはもちろん、3カ月に1度など定期的に歯科でクリーニングを受けるのもおすすめです。

まとめ:歯周病の原因とメカニズム・進行過程

■歯周病とは、歯と歯茎の間で細菌による感染が起こり、歯の周りで炎症が起こっている状態を指す
■歯周病は、歯肉炎・歯周炎(歯槽膿漏)の総称。初期症状である歯肉炎から、重症の歯周炎・歯槽膿漏へと進行する
■歯周病は「歯の周りで炎症が起こる」と「骨が溶ける」という2つの症状が混じっている。単に歯茎が腫れるだけではなく、最終的にあごの骨が溶けてしまい歯を失う可能性もある
■歯周病菌は、ほとんどの人の口の中にもともと存在することが多い
■歯周病菌を増やさないためにも、しっかりと歯磨きをすることが大切

歯周病は単なる歯茎の炎症だけではなく、放置すると歯を失ってしまう可能性のある病気です。痛みを感じる場合が少ないので、知らないうちに進行し重症化してしまうことも珍しくありません。

歯茎から血が出たり、違和感があるなど、早い段階で歯科での受診をおすすめします。

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